こんにちは!
りお歯科クリニック歯科医師ブログ7月号です!
今年の6月より保険料の算定方法が改定されました。
今回の歯科関連の改定は非常に大掛かりなもので、当院のような歯科医療の現場だけでなくレセコン(診療報酬明細書などを入力するシステム)メーカや、歯科診療器具を取り扱うメーカーも大混乱で、ブログに取り掛かるのも遅くなってしまいました。
細かな改定はたくさんあるのですが、分かりやすく言うと「子供も大人も口腔機能の管理をしっかりしましょうね」「医科歯科連携して糖尿病や歯周病の重症化を防いでね」というものです。
前者の口腔機能管理をしましょう!というのは、6月以降歯医者に行くと検査が増えたな?と思われた方もみえるかと思いますし、まぁ大事なのだろうな…というのも理解しやすいですよね!
でも、次の「医科歯科連携して糖尿病や歯周病の重症化を防いでね」というのは何の話?と思われた方も多いのではないかと思います。
以前よりこちらのブログを読んでくださっている方は「あぁ前にも読んだな」と思われたかも知れませんが、今回は改めて糖尿病と口腔内環境について書いてみようと思います。
糖尿病と口腔内環境の関係についての研究は、近年ますます注目されています。
糖尿病は、体内の血糖値を正常に保つインスリンの機能が障害されることで発生する慢性疾患であり、インスリンの分泌や作用が不足することで、高血糖状態が続く病気です。
一方、口腔内環境とは、口腔内の細菌バランスや唾液の分泌量、口腔粘膜の健康状態など、口腔内の全体的な健康状態を指します。
これらの要素が互いに影響し合うことで、口腔内疾患や全身疾患の発症リスクが高まることが様々な研究で明らかになった事もあり、医科と歯科は連携して患者の健康維持に努められるよう大幅な保険の改定が行われたわけです。
糖尿病と口腔内疾患の関連性
歯周病との関係
糖尿病患者は歯周病にかかりやすいことが近年の研究や統計で分かっており、糖尿病患者や重度歯周病患者の方にはよく知られています。
実際に糖尿病患者の方が持っている「糖尿病連携手帳」には歯科医院が記入する欄が設けてあります。
歯周病は、歯肉炎から始まり、進行すると歯周組織の破壊を引き起こす日本人が歯を失う理由第1位の炎症性疾患です。
ある研究では、糖尿病患者は歯の喪失リスクが高く、口腔内の健康状態が全身の健康状態に直接影響を与えることも示されています。
また、糖尿病患者は高血糖状態が続くため、血管の障害や免疫機能の低下が生じやすくなります。
これにより、口腔内の細菌に対する抵抗力が低下し、歯周病菌が増殖していくことになります。
一方で、重度の歯周病は、炎症性サイトカインや内毒素(リポ多糖)を放出し、全身性の炎症反応を引き起こします。
この炎症反応がインスリン抵抗性を増加させ、糖尿病のコントロールをさらに困難にすることから、糖尿病と歯周病は、お互いに悪影響を及ぼし合う関係にあると言えます。
米国の第三次国民健康栄養調査(NHANES III)では、糖尿病患者は健常者に比べて重度の歯周病にかかるリスクが約2.5倍高いというデータも示されています。
口腔乾燥症との関係
糖尿病患者は口腔乾燥症(ドライマウス)を訴えることが多いです。
これは、糖尿病により唾液腺の機能が低下し、唾液の分泌量が減少するためだと考えられています。
唾液は口腔内の自浄作用を担っており、唾液の減少は口腔内細菌の増殖を招き、先ほどの歯周病はもちろんのこと、むし歯のリスクも高めてしまいます。
口腔内環境の改善が糖尿病に及ぼす影響
歯周病治療の効果
歯周病治療を受けることで、糖尿病患者の血糖コントロールが改善されることが多くの研究で報告されています。
具体的には、歯周病の治療により炎症が軽減され、インスリン抵抗性が改善されると考えられています。
ある研究では、歯周病治療を受けた糖尿病患者のHbA1c値が約0.4%低下したと報告されています。
この数値の低下は、糖尿病治療薬の追加や生活習慣の改善と同等の効果を持つとされています。
口腔ケアの重要性
上記の事からも糖尿病患者にとって、日常的な口腔ケアの実践は非常に重要であると言えます。
適切なブラッシングやフロスの使用、定期的な歯科受診は、口腔内の細菌バランスを正常化させ、歯周病やその他の口腔内疾患を予防するために欠かせません。
また、唾液の分泌を促進するためのマッサージや、適切な水分摂取、ガムなどの咀嚼も推奨されます。
医科歯科連携のアプローチ
多職種連携の重要性
糖尿病と口腔内環境の管理には、医師、歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士など、多職種の専門家が連携してアプローチすることが重要であり、それが令和6年の保険改定で示されたわけです。
当院も公益社団法人日本糖尿病協会(JADEC)の登録歯科医として名を連ねており、スタッフも糖尿病と口腔ケアについて、新たな知識を日々アップデートしております。
歯科治療の内容によっては、血糖値のコントロール状況を確認しながら、適切に進める必要があるため、当院では糖尿病で通ってみえる医院へお手紙を出させていただくことも行っております。
なんで糖尿病で通っている内科の話を聞くの?と、思われるかも知れませんが、ご協力をお願いいたします。
まとめ
糖尿病と口腔内環境の関係性は複雑でありながら、密接なつながりがあります。
糖尿病患者にとって、口腔内の健康を保つことは全身の健康を維持するために非常に重要ですし、糖尿病で通院していなくても、ご家族に糖尿病の方がみえる家系の方などは食事も大事ですが、その入り口でもあるお口のケアを健康維持の入り口として意識してもらえると良いかも知れません。
メタアナリシスという複数の研究結果(学術論文など)を統合して分析する手法でも、歯周治療や適切な口腔ケアが糖尿病の管理に有効であることを示しています。
私たち、りお歯科クリニックも糖尿病患者の口腔内環境を改善し、全身の健康を守るための取り組みを進めております。
医科の先生からも、歯周病の診断と治療を促すために紹介状をいただくことも増えております。
ご来院の際には保険証と「糖尿病連携手帳」をお持ちいただきご来院ください!
それでは!またすぐに8月のブログでお会いしましょう!
岐阜市の歯医者りお歯科クリニック