歯科医師ブログ2023.11月
りお歯科クリニック歯科医師ブログ!
勝手に今日11月18日を、いい(い)歯の日に語呂合わせしてみたのでブログを更新します!
今回は「失った歯を補う方法」について書いていきます。
まず、お伝えしておきたいことは、イラストにもあるように失った歯をそのまま放置しておくと隣接する歯が倒れてくる事や、噛み合わせる歯が伸びてくる(実際に歯が長くなるのではなく、かみ合う先を求めて歯ぐきから抜けていく)事がありますので、必ず歯科医院を受診していただき、抜けた歯はそのままにせず、何かしらの処置をしてください!
その上で、今回紹介する失った歯を補う方法の中からご自身にあった治療方法や後悔しない治療方法を選んでいただけると嬉しいです。
それでは、ポピュラーな方法として「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」の順にメリットやデメリットを交えて書いてみます。
入れ歯
入れ歯は、ご存知の方も多いと思いますが欠損した歯を補うための取り外し可能な装置です。
入れ歯のメリットとデメリットから書いていきますね。
メリット
低コスト: 入れ歯は保険適用される物もあり、費用が低く抑えられます。
取り外し可能: 入れ歯は取り外し可能で、お手入れが比較的容易です。
懐かしいCMでありましたよね!「お口くさ~い」と言われて洗浄液に入れると綺麗になるというアレですね!
その他にも外してブラッシングなどしてもらうと尚よいです!
多くの歯を一度に補える: 入れ歯は一つの装置で多くの失った歯を補うことができます。
デメリット
噛めない: 初めて入れ歯を入れられた方が一番驚かれる事ですが、皆さんが想像しているよりも噛めません。
よく言われるのが天然歯の半分以下(部分入れ歯/30~40%程度・総入れ歯10~20%程度)の力でしか噛めないと言われています。
見た目と感触: 入れ歯は通常、外観が不自然で感触に関しては更に不自然です。
部分入れ歯の場合は金属フレームが見えることがありますし、やはり硬いものを噛むことは難しくなるケースがあり、食事が楽しめないと言われる患者さんが多いです。
不安定性: 入れ歯は、歯ぐきや口内の他の歯を支えにするため、会話や食事の時に移動しやすく、不安定なことがあります。
話している時に入れ歯が外れる映像を見たことがある方も多いと思います!
そのためにガムのような使い捨ての接着剤で固定されるケースもありますが、万能ではありません。
痛くて嵌められない!外れなくなった!など、調整にご来院される患者さんも非常に多いです。
寿命の制約: 入歯の寿命は、保険で作るものでは4~5年程度と言われています。
毎食後と就寝前に手入れをして大事に使っていただけると長く使えることもあるようでが、保険診療では半年を越えれば作り替えができます。
逆に言えば半年程度でダメになる可能性を秘めているともいえますね…
顎骨吸収(がっこつきゅうしゅう): 聞いた事ない言葉ですよね!でも、とても大事な事なので覚えておいてほしいです!
歯が抜けると顎骨に対する負荷や刺激が減少し、その部分の顎の骨組織が時間とともに減少することをいいます。
顎骨の容積が減少すると、隣接する歯の支えが不十分になり歯が倒れてくる事だけでなく、後でブリッジやインプラントにしようとした時に困難になる事があります。
合わない入れ歯などは装着時間が短くなり、特にこの症状が顕著に現れる傾向がありますので注意が必要です。
ブリッジ
ブリッジは、隣接する歯を土台にして欠損部位を補う治療法です。
歯から歯へ歯の「橋」をかけるから「ブリッジ」というんですね!(逆に分かりにくいですかね?)
メリット
治療期間が比較的短い: ブリッジは比較的早く治療が完了します。
もちろん状態にもよりますが、数週間で治療を終える事ができます。
低コスト: 保険診療も可能でインプラントに比べて費用が低いため、負担が少ないと言えます。
デメリット
隣接する歯の削り取り: ブリッジを装着する(橋を渡す)ために、土台になる隣接する健康な歯を削る必要があります。
歯科医師としても健康な歯を削るという事は失った歯を補うためとは言え、実は少し抵抗があります。
なぜなら、歯を削るという事はその後むし歯になるリスクが上がる事になりますし、フロスも通すことができなくなりますので、歯間ブラシなどでケアしていただかないと、むし歯はもちろんですが、歯周病のリスクも上がってしまいます。
因みに、後からインプラントにしようとした場合、削った隣接する歯にも何かしらの被せ物が必要になってきます。
寿命の制約: ブリッジは通常、数年から10年程度(平均7~8年と言われていますが、補う失った歯の本数によってさらに短くなる事もあるようです)の寿命しか持たないことがあり、定期的な交換が必要となります。
(参照文献:口腔衛生学会誌「歯科修復物の使用年数に関する疫学調査」によると平均8年と記載されています)
因みに、保険診療では2年を越えれば作り替えが可能になります。
入れ歯と同じで、対応年数と直結しませんが2年経ってダメになっても保険治療で公費や保険料から一部を負担しますよ!と、言っているわけですね。
見た目と感触: インプラントに比べて、ブリッジは外観と感触が不自然なことがあり、特に前歯部分で目立つことがあります。
ちなみに、入れ歯よりはリスクが低いと思いますが「顎骨吸収」のデメリットもあります!
ここまでの入れ歯とブリッジは保険診療が可能です。
しかし、保険診療というのは「機能回復」を目的にしているため、使う材料などが決められており、見た目や快適さというのは、あまり考慮されていません。
実は入れ歯もブリッジも目立たないものや白い歯に近いものにする事も可能ですが、その場合は自費診療になってしまいます。
※保険と自費の混合治療はできないため、自費の入れ歯やブリッジは低コストというメリットが無くなってしまうのですが、低寿命(の可能性がある)というデメリットは残る事になるので選ばれる際はよく考えられることをお勧めします。
インプラント
インプラントは、欠損した歯を人工的な歯(インプラント)で補う治療法です。
あごの骨に埋め込む人工歯根(フィクスチャー)と人工歯(上部構造)その二つを繋ぐ土台(アバットメント)の3つの構造体からできています。
メリット
見た目と感触: インプラントは非常に自然な外観と感触で会話ができます。
周囲の歯とほぼ同じように見え、会話の際にも違和感がほとんどありません。
周囲の歯への影響が少ない: インプラントは隣接する健康な歯に影響を与えることなく、失った歯を単体で補うことができます。
これは歯に金具を引っ掛ける入れ歯や、健康な歯を削る必要のあるブリッジと比べて大きな利点と言えます。
耐久性と長寿命: 適切なケアを施せば、インプラントは非常に耐久性があり、長期間持続することが期待されます。
(厚生労働省発表のデータでは、10~15年の累積生存率は上顎で約90%、下顎で約94%と非常に耐久性が高いと言えますが、定期的に適切なメンテナンスや歯周病ケアなどを怠るとインプラントの残存率が低くなるようです)
参照:厚生労働省 「(pdf)歯科インプラント治療のためのQ&A」
噛む力の向上: インプラントは咀嚼能力を向上させ、食事の制約を減少させます。
ほとんどの場合で歯があった時と同じように食事を楽しむことができます。
先の、厚生労働省「歯科インプラント治療のための Q&A」にも書かれていますが、入れ歯と比べると「総合的な満足度、快適性、安定性、会話ならびに咀嚼能力において優れている」と言われています。
私たちも、入れ歯からインプラント又はブリッジからインプラントにされた患者さんの声を聞くと同じように満足してみえる方が多いと感じています。
デメリット
手術と回復期間: インプラント手術が必要で、手術に伴うリスクや不快感があることがあります。
また、手術後に回復期間が必要です。
高コスト: インプラント治療は他の治療よりも費用が高い傾向があり、保険が適用されないことが多いです。
適さない場合がある: 一部の患者さまには適さない場合があり、骨の状態※や健康状態によってインプラント治療をおすすめしない場合もあります。
※骨造成を行う事もできます
いかがでしたか?
細かいことを言えばもっとあるんでしょうが、出来る限り伝わりやすい言葉を選んで書いてみました!
どの治療であっても完全に失った歯と同様では無いという事と、その後のメンテナンスは必ず必要であるという事をご理解いただきたいです。
今ある歯をちゃんと守っていく事を大前提に、定期的に歯科医院へケアにお越しいただく事から始めてもえると嬉しいです。
生きている限り会話も食事も楽しみたいものです!
患者さまの置かれている立場から、それぞれの治療方法のメリットデメリットをしっかりと知っていただき歯を補う治療方法を選んでいただく際の参考してみてください。